選択の科学【シーナ・アイエンガー】

人生を通じて人間は大なり小なり、多かれ少なかれ選択をしている。今後の人生を決めるのは自分の選択であり背景には種々の科学が存在する。

 

 人生を測るものさしは、人によって違う。年月、重要なできごと、業績など。だが人生は、私達の行う選択によって計ることも出来る。さまざまな選択が積もり積もって、わたしたちを今いるところに導き、今ある姿にしているのだ。

 個人の文化や習慣により、選択の根拠が異なる可能性がある。選択が個人主義的観点に基づくか、集団主義的考え方を持っているかで考え方が大きく異なる。

 集団主義文化では、決定権というものを、もっと包括的に考えるべきだと教えられる。ヒンドゥー教聖典、バガヴァット・ギーターの恐らく最もよく知られた一節の中で、クリシュナ神がこう言って英雄アルジュナを戒める。「汝が思うままに出来るのは、自分の行動だけで、行動の結果ではない。報酬目当てで行動したり、怠惰に屈したりすることがあってはいけない。」この世界を動かしているのは、目標を追求する個人の行動だけでなく、社会的文脈や運命の定めでもある。

 フレーミングの見直しによって、視点や判断根拠が大きく変わる。以下の例が第三者、特に上に立つ人間が意識しなくてはいけないポイントだ。

ロベルト・ゴイエダ(コカ・コーラのCEO)は問題を違う枠組み(清涼飲料水のシェアを40%獲得していたが、飲料水市場全体では2%に過ぎないことを指摘して)で捉え直すことによって、視野を広げ、独創的な考え方をするよう、経営陣にハッパを掛けたのだ。

 豊富な品揃えが必ずしも選択の判断基準になるとは限らない。敢えて選択を絞ることで、人は選択をする(させられる)のだ。

 

選択の科学

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